日本は開運駅だらけ!? 受験に御利益の“最強パワスポ”

 

受験シーズンもいよいよ佳境。残るは神頼みだけという人も多いだろう。とはいえ、いつもの天神様では並み居るライバルの中で一頭地を抜けるか心配だ。そこで、全国のいっぷう変わったパワースポットを紹介する。霊験あらたかな“穴場”パワーで強運をつかんでほしい。

 根津神社(東京都文京区)の一角に、そのカヤの木はある。周囲は縄が3重に巡らされ、ぎっしり絵馬がかけられている。見るからに特別な木の風格だ。

「明治の終わりぐらいまで、この木に白蛇がすんでいたそうです。神聖なものとして当時の人は崇め、大勢の人がこの木を訪れて願をかけたと言われています」

 宮司の内海一紀さんが説明してくれた。「願かけカヤの木」と呼ばれ、願いを託すとかなうと信じられているのだそうだ。

 同神社の南北には東京大学と日本医科大学が位置し、医師などの国家試験を控えた学生の参拝も多い。

「意外と知られていないのですが、根津神社は東大弥生キャンパスの氏神様なんですよ」

 と内海さん。近くには、学問の神様として名高い湯島天神もあるが、あえて根津神社を選ぶ受験生も少なくないそうだ。

「東大の氏神様」。これだけで“霊験あらたか感”も倍増。受験界屈指の「パワースポット」といえるだろう。

 全国には、こうした知る人ぞ知るパワースポットがたくさんある。

「落ちない」をキーワードにした、人気の場所は多い。宮城県石巻市の釣石神社は、境内にある「“落ちない”巨石」で近隣に広く知られる。また、高知市内の「ゴトゴト石」は、押せばゴトゴトと音がするほど揺れるのに、「落ちそうで落ちない」ことから、いつしか受験のパワースポットに。図にはないが、「弁慶のはさみ石」(新潟県佐渡市)も、今にも落ちそうな大きな岩が、これまた落ちない。

 とにかく“落ちないパワー”を強力に感じさせるのが、「航空神社」(東京都港区)だ。新橋にある航空会館の屋上に建立されている。元々は航空関係の功労者や殉職者を祭ったものだが、受験生にも年々人気が上昇中という。

「近年は受験シーズンになると、お守りも月100体ほど頒布している」(神社を管理する日本航空協会)とのこと。羽田空港の第1旅客ターミナルにも分祀されているので、在京大学の受験などで東京へのフライトがある受験生は、立ち寄ってみてはどうだろう。

 さて、陸路はどうか。実は調べてみると、鉄道関係で縁起のいいスポットも数多い。名前が験担ぎになると話題の駅は結構ある。

 徳島県吉野川市には、JR徳島線の「学(がく)駅」。かつて、各地から人々が学問を修めに来た寺がこの地にあったことから、「学」の地名がつけられたのが由来という。

「学駅」の入場券を買うと、切符に「入」と「学」の字が縦に並び、「入学」に。代々近隣の受験生の間でお守り代わりにされてきた。JR四国では、この“風習”に注目し、毎年「合格祈願きっぷ」という受験グッズを販売している。中身は、「学駅」の入場券5枚とお守り袋だ。なぜ5枚入りかというと、「5入学(ごにゅうがく)」となることから。JR四国の主要駅での販売のほか、同社の通販サイト「夢四国」(http://www.yumeshikoku.com/)でも購入できる。

 このほかにも、南海電鉄の「学文路(かうろ)駅」、紀州鉄道の「学門駅」や松浦鉄道の「大学駅」など、合格をイメージさせる駅名は結構ある。

 変わり種は、広島市の「可部(かべ)駅」。「応援入場券」には「KABE(かべ)を乗り超えろ!」とある。可部=壁。ちょっと強引な気もするが、おもしろいので合格、ということで。

 二つの駅間を結んで、合格のイメージにつなげたグッズもある。西日本鉄道では、福岡県久留米市の「試験場前駅」と、同みやま市の「開(ひらき)駅」とを結ぶ片道乗車券を「合格祈願開運きっぷ」として売り出している。「試験場」での運が「開」けますように。よく気が付くなあと感心させられる。

 阿武隈急行「GOかくだ切符」や名古屋鉄道の「合格へGo さくら満開きっぷ」なども駅間結合型だ。こうしたアイデア勝負の大半が私鉄で、その発想の柔らかさには恐れ入る。

 受験生応援が、地域振興に一役買っているものもある。熊本県球磨村のJR肥薩線「一勝地(いっしょうち)駅」では、「一勝」をあげる「地」として、40年近く前に記念入場券を発売。1986年に無人駅となってからも、駅に併設された観光案内所で入場券を取り扱っている。同観光案内所の職員は、こう話す。

「毎年この時期になると、全国から注文が寄せられます。近くの神社仏閣の参拝に併せて訪れる人も多く、村の観光にも役立っているんですよ」

“鉄”系受験グッズの多くは、駅窓口だけではなく、インターネット通販などでも取り扱っている。いろいろ取り寄せて、コレクションするのも楽しい。御利益が数に比例する……かは、わからないが。

※週刊朝日 2016年2月12日号